スウェーデンマッサージ講座

解剖学講座

集客講座

「手が疲れる…」整体師のためのセルフケアと体の使い方

「手が疲れる…」整体師のためのセルフケアと体の使い方

整体スクールで講師を務めて18年、毎年のように聞く相談があります。それは「施術をしていると手が疲れて、痛くなってしまう」というものです。特に開業したばかりの整体師や、1日の施術数が増えてきた整体師からよく聞かれる悩みです。

「人を癒す仕事なのに、自分の体がボロボロでは本末転倒ですよね」と苦笑いで話してくれた教え子の言葉が、今でも印象に残っています。確かに、整体師が体を壊してしまっては、お客様に良い施術を提供することはできません。

今日は、私がこれまでの経験で学んだ、整体師のためのセルフケアと正しい体の使い方についてお話ししたいと思います。現役の整体師の皆さんにとって、長く健康に働き続けるためのヒントになれば幸いです。

なぜ整体師は手を痛めやすいのか

まず、なぜ整体師は手や腕を痛めやすいのかを理解することが大切です。私の教え子たちの症例を見ていると、いくつかの共通する原因があります。

力に頼った施術

最も多いのが「力で押す」施術スタイルです。私の教え子の一人、開業3年目の田中さん(仮名)が典型的な例でした。彼は体格も良く力もあったため、強い圧で施術することでお客様から「効く!」と評価を得ていました。

しかし、1日7〜8人の施術を続けるようになってから、手首や肘に痛みを感じるようになりました。「最初は軽い疲労感だったのですが、だんだん日常生活にも支障が出るようになって」と相談に来られました。

力に頼った施術は、短期的には効果を感じられるかもしれませんが、長期的には整体師の体に大きな負担をかけます。また、お客様の体にとっても、実は最適な施術とは言えません。

間違った体の使い方

二つ目の原因は、体の使い方の間違いです。手や腕だけで施術しようとすると、どうしても局所的な負担が大きくなります。

佐藤さん(仮名)という女性の教え子は、小柄で力がないことを気にして、「力不足を技術で補おう」と考えていました。しかし、その「技術」が実は手先だけの細かい動きに偏っており、結果的に手指や手首に過度な負担をかけていました。

正しい施術は、全身を使って行うものです。体重移動や重心の変化を利用することで、手や腕への負担を大幅に軽減できます。

連続施術による疲労蓄積

三つ目は、連続施術による疲労の蓄積です。整体師になりたての頃は、「たくさんお客様を診て経験を積みたい」「収入を増やしたい」という気持ちから、施術間隔を詰めすぎる傾向があります。

山田さん(仮名)は開業当初、効率を重視して施術と施術の間を10分しか空けていませんでした。「お客様をお待たせしたくない」という気持ちからでしたが、自分の体を休める時間がなく、慢性的な疲労状態になってしまいました。

正しい体の使い方の基本

では、どのような体の使い方をすれば、手や腕への負担を軽減できるのでしょうか。私がスクールで教えている基本原則をご紹介します。

重心と体重移動の活用

最も重要なのは、重心の移動を活用することです。施術は「押す」のではなく「重心を移動させる」ことで行います。

私がよく使う例えは「雪だるまを押す感覚」です。雪だるまを動かすとき、腕の力だけで押そうとするとすぐに疲れてしまいます。しかし、体全体で重心を前に移動させれば、楽に動かすことができます。

田中さんには、この体重移動を意識した施術方法を指導しました。最初は「圧が弱くなるのでは」と心配していましたが、実際にやってみると「以前よりも深く、効果的な圧をかけられる」ことがわかりました。そして何より、手首の痛みが大幅に軽減されました。

脚と腰の連動

施術の力は、手や腕からではなく、脚と腰から生み出すべきです。これは武道や舞踊にも共通する原理です。

立位での施術時は、前足に体重を乗せながら施術し、後ろ足で体を支えます。座位での施術でも、椅子の高さを調整して、脚の力を活用できるようにします。

佐藤さんには、まず正しい姿勢作りから始めてもらいました。施術台の高さを調整し、自分の体に負担のない姿勢で施術できる環境を整えました。結果として、施術の効果が上がっただけでなく、手指の疲労も大幅に改善されました。

呼吸との連動

呼吸と施術のタイミングを合わせることも重要です。圧をかけるときは息を吐きながら、緩めるときは息を吸いながら行います。

これにより、施術にリズムが生まれ、無駄な力が抜けます。また、お客様にとっても、整体師の呼吸に合わせることで、よりリラックスした状態で施術を受けることができます。

日常的なセルフケア方法

正しい体の使い方と並んで重要なのが、日常的なセルフケアです。私が実践し、教え子たちにも勧めている方法をご紹介します。

手首と前腕のストレッチ

施術前後には必ず手首と前腕のストレッチを行いましょう。特に効果的なのは、手のひらを前に向けて腕を伸ばし、反対の手で指先を手前に引く「祈りのポーズのストレッチ」です。

山田さんは、このストレッチを1日5回、各30秒間行うことを習慣にしました。「簡単すぎて効果があるのか疑問でしたが、続けてみると確実に手首の疲労が軽減されました」と話してくれました。

肩甲骨周りのケア

整体師は前かがみの姿勢が多いため、肩甲骨周りの筋肉が固くなりがちです。肩甲骨を寄せる、回すなどの動きを定期的に行いましょう。

私は1日の施術が終わった後、必ず肩甲骨のストレッチを10分間行います。壁に手をついて胸を開くストレッチや、タオルを使った肩甲骨回しなどが効果的です。

指の関節ケア

意外に見落とされがちなのが、指の関節のケアです。各指の関節を一つずつ、優しく回したり曲げ伸ばししたりします。

「指なんて」と思うかもしれませんが、細かい手技を多用する整体師にとって、指の柔軟性は非常に重要です。田中さんも「指のケアを始めてから、細かい施術が楽になった」と効果を実感しています。

施術環境の整備

セルフケアと併せて重要なのが、施術環境の整備です。体に負担のかからない環境を作ることで、疲労を大幅に軽減できます。

施術台の高さ調整

施術台の高さは、整体師の身長に合わせて適切に調整する必要があります。高すぎると肩に負担がかかり、低すぎると腰に負担がかかります。

目安としては、施術台に手を置いたとき、肘が軽く曲がる程度の高さが適切です。可能であれば、電動で高さを調整できる施術台の導入をお勧めします。

足元の工夫

長時間立って施術する場合は、足元にクッションマットを敷くことで足や腰への負担を軽減できます。また、施術台の下に足台を置き、片足を乗せることで腰への負担を分散させることも効果的です。

適切な照明

暗い環境での施術は目を疲れさせ、姿勢も悪くなりがちです。適切な明るさの照明を確保し、目と体両方の負担を軽減しましょう。

休息とリカバリーの重要性

最後に、適切な休息とリカバリーの重要性についてお話しします。

施術間隔の確保

山田さんの例でも触れましたが、施術と施術の間には適切な休息時間を確保することが大切です。最低でも15分、できれば20分程度の間隔を空けることをお勧めします。

この時間を使って、軽いストレッチや水分補給、深呼吸などを行います。「時間がもったいない」と思うかもしれませんが、長期的に見れば、この休息時間が施術の質と整体師の健康を保つために不可欠です。

定期的な自分メンテナンス

私は月に一度、信頼できる同業者に施術をしてもらっています。また、年に数回は温泉やマッサージに行き、体のメンテナンスを行います。

「整体師なのに人に施術してもらうなんて」と思う方もいるかもしれませんが、自分では気づかない体の歪みや疲労を発見し、客観的な視点でアドバイスをもらうことは非常に価値があります。

まとめ

整体師として長く健康に働き続けるためには、正しい体の使い方を身につけ、日常的なセルフケアを習慣化することが不可欠です。

「手が疲れる」という症状は、体からの重要なサインです。このサインを無視せず、早めに対処することで、より良い整体師生活を送ることができます。

私がこの18年間で学んだ最も重要なことは、「自分の体を大切にしてこそ、お客様に最高の施術を提供できる」ということです。皆さんも、今日からできることから始めて、長く健康な整体師人生を歩んでいただきたいと思います。

技術の向上と同じくらい、自分の体のケアにも時間と労力をかけてください。それが、結果的に皆さんの整体師としての価値を高め、より多くのお客様に喜んでいただける道につながるのです。

1000名以上が読んだ冊子無料配布中

無料の説明会や問い合わせなどもすべてラインからお願いします

SHARE:
あなたへのおすすめ